クリニックの口コミが名誉毀損にあたるケースとは?悪質投稿の削除と対応方法を解説

五十嵐沙織弁護士
五十嵐沙織弁護士
(第一東京弁護士会)
この記事の監修者:
五十嵐 沙織(弁護士法人広尾有栖川法律事務所)
中央大学大学院法務研究科修了。freee株式会社にて企業内弁護士として東証マザーズ(現グロース)の上場を担当。現在弁護士法人広尾有栖川法律事務所を開業し、スタートアップ企業の伴走支援や、医療、人事労務に注力。弁護士のプロフィールはこちら

近年、クリニックを選ぶ際に、口コミを参考にする人が非常に増えています。

診療内容や場所といった基本情報に加えて、実際に通院した人の体験談が安心のきっかけになる一方、否定的な書き込みがあれば受診をためらう理由にもなります。

口コミは集患や経営、スタッフの採用にまで影響を与えるため、適切に向き合うことが重要です。

本記事では、口コミがクリニックに及ぼす影響や患者対応のポイントについて解説します。

口コミがクリニックに及ぼす影響とは

口コミがクリニックに及ぼす影響とは

口コミは患者さんの受診行動やクリニックの経営に大きく関わります。

好意的な内容は信頼や集患につながりますが、否定的な評価は売上や人材確保にまで影響を広げてしまうことがあります。

患者が病院を選ぶ決め手になる

最近では、Googleマップや口コミサイトを見てクリニックを選ぶ患者が非常に増えています。

診療科目や場所などの基本情報だけではなく、実際に通院した人の体験談や感想が大きな参考材料になっています。

診察の内容や待ち時間、スタッフの対応など細かい点も口コミで確認できるため、初めて受診する患者にとって安心材料となるでしょう。

一方で、低評価な口コミが書かれていると、ユーザーはネガティブな印象を抱いてしまいます。

口コミは、集患に直結する重要な存在になっているのです。

悪評が売上や採用に直撃する

否定的な口コミは、新しい患者を遠ざけるだけでなく、クリニックの売上や経営そのものにも響いてきます。

さらに、働こうと考えている人もネットの評判を気にするため、悪い評価が目立つと応募が減ってしまい、人材確保が難しくなる側面もあります。

在籍中のスタッフが口コミを目にして気持ちが落ち込んだり、退職に追い込まれてしまうケースも考えられます。

結果として患者数が減り、人材も流出するという悪循環につながり、経営に大きなリスクを与えるのです。

中にはスタッフを名指しする投稿も

中には、医師や看護師などのスタッフを名前付きで批判するような口コミも見られます。

例えば「○○先生の対応が悪い」といった形で特定されると、本人は強い精神的ストレスを抱えやすく、仕事への意欲や職場全体の雰囲気にも悪影響を与えてしまいます。

さらに、容姿や性格をからかうような表現が加わると、単なる意見を超えて個人攻撃に近いものとなり、名誉毀損や侮辱に発展する可能性もあります。

スタッフを守り、安心して働ける環境を維持するためにも、悪質な口コミには注意を向けなければなりません。

名誉毀損に当たる口コミ・当たらない口コミ

口コミが名誉毀損にあたるかどうかは、内容や書き方によって大きく変わります。

事実を示すものなのか、単なる感想なのか、公益性の有無という点が判断のポイントになります。

判断のカギは「3つの要件」

口コミが名誉毀損にあたるかどうかは、以下の3つの要件を満たしているかで判断されます。

具体的には、以下の通りです。

  • 公然性 不特定多数の人が見られる状態であること

    →Googleマップや口コミサイトの投稿は、誰でも閲覧できるため通常は該当します

  • 事実の摘示 証拠で確認できる具体的な事実を示していること

    →例えば「診療費を誤って多く請求された」という内容が該当します

  • 名誉の毀損 個人やクリニックの社会的評価を下げる危険がある内容であること

    →実際に評判が下がらなくても、危険があれば成立します

上記の要件が揃うと、名誉毀損に該当する可能性が高くなります。

感想レベルなら名誉毀損にならない

「説明が十分ではなかった」「待ち時間が長かった」というような表現は、患者が感じた印象や評価に留まるため、刑法上の名誉毀損罪には該当しません。

何故なら、客観的に証明できる事実を示しているわけではなく、あくまで主観的な感想だからです。

ただし「無能な医者だ」といった書き込みは、名誉毀損ではなくても侮辱罪にあたる可能性があります。

さらに民事では、意見や感想であっても、社会的な評価を大きく損なうほどの内容であれば名誉毀損と判断される場合もあります。

口コミが単なる感想か、それとも事実を伴うものかは、重要な違いが生じます。

公益性があると名誉毀損にならないことも

名誉を傷つけるように見える口コミでも、一定の条件を満たせば名誉毀損にあたらないことがあります。

具体的には、口コミの内容に公共性があり、公益を目的として書かれ、真実であると認められる場合です。

例えば、医療機関における不正行為を告発する内容は、社会にとって重要な情報であるため、一定の条件を満たすことがあります。

ただし、事実が誤っていたり、注目を集めることだけを目的として投稿された場合には公益性が否定され、名誉毀損が成立します。

口コミの背景に「公益のためかどうか」という視点があるかも、重要な判断材料になるのです。

問題が生じやすい口コミのパターン

問題が生じやすい口コミのパターン

口コミの中には、虚偽の断定や根拠の無い噂、待ち時間への不満といった形で、クリニックの評価を下げやすいものが含まれています。

「無資格治療」と断定する虚偽投稿

「医師免許を持っていない」「認可されていない治療をしている」といった断定的な書き込みは、事実でなければ虚偽にあたり、名誉毀損として扱われる可能性が高いものです。

虚偽投稿はクリニックの信頼を一気に失わせてしまい、患者が受診を控える原因になります。

さらに、採用活動が難しくなったり、働いているスタッフの意欲が下がったりすることも少なくありません。

根拠のない断定は経営に大きな打撃を与えるだけでなく、法的対応を検討せざるを得ないケースもあります。

真偽不明のゴシップ的な書き込み

「院長とスタッフが不適切な関係にある」「過去の医療事故を隠している」といった噂のような口コミは、十分な証拠が無いまま広まりやすい点が厄介です。

実際に事実かどうかは不明でも、投稿を目にしたユーザーに強い不安を与え、クリニックへの信頼を大きく損ないます。

もしも虚偽であれば、刑事上の名誉毀損に問われる可能性があり、真実だったとしても公益性が認められなければ違法と判断されることもあります。

根拠のないゴシップ的な投稿は、風評被害につながりやすいため、特に注意が必要です。

診療の待ち時間に対する不満

「予約したのに長く待たされた」「診療内容に関する説明が無かった」という内容は、医療機関の口コミでよく目にする典型的な不満です。

診療の質とは直接関係がなくても、待ち時間が長いと患者の満足度は大きく下がります。

さらに、受付の対応がそっけなかったり、スタッフの私語が目立ったりすると、「雑な対応をされた」と感じやすくなります。

その結果、「信頼できない」「もう行かない」といった厳しい評価につながり、評判に影響を及ぼすケースも少なくありません。

悪質な口コミにどう対処するか

悪質な口コミに直面したときは、慌てて対応するのではなく、段階を踏んで進めることが大切です。

証拠の確保から削除依頼、必要に応じた法的手段まで、状況に合わせた対応が求められます。

まずは証拠を残すことから始める

悪質な口コミを見つけたら、最初に行うべきは証拠を残すことです。

投稿が削除されてしまうと後から確認できなくなるため、出来るだけ早く対応する必要があります。

一般的には、画面全体をスクリーンショットに残し、URLや投稿日時も一緒に控えておくと安心です。

確固たる証拠が無ければ削除依頼や法的な手続きが難しくなりますが、記録を残しておけば、削除依頼や損害賠償の請求に踏み出しやすくなります。

サイト運営者へ削除依頼を行う

次のステップとしては、口コミサイトの運営者に削除を依頼する方法があります。

多くのサイトでは利用規約やガイドラインを設けており、名誉を傷つける内容や虚偽の情報は削除対象とされています。

削除依頼は、問い合わせフォームや「レビューを報告」ボタンから申請できます。

基準に合致すれば比較的早く削除されることもありますが、必ず対応してもらえるわけではありません。

その場合、裁判所に削除仮処分を申し立てる方法もあり、状況に応じて検討が必要です。

投稿者を特定して責任を追及する

削除だけでは十分でない場合や、経済的・精神的な被害が大きい場合には、投稿者を特定して責任を追及する方法があります。

匿名での投稿が多いため、裁判所を通じて「発信者情報開示請求」を行い、サイト運営者やプロバイダからIPアドレスなどを開示してもらう流れになります。

開示が認められれば、損害賠償の請求や刑事告訴も可能になります。

ただし、IPアドレスの保存期間内に、出来るだけ早く動くことが大切です。

弁護士に依頼するメリットとは

弁護士に依頼するメリットとは

弁護士に依頼することで、状況に応じた的確な判断や行動をスムーズに進められます。

専門的な知識をもとに選択肢を整理し、実務まで任せられる点が大きなメリットです。

最適な解決策をその場で提案してもらえる

悪質な口コミや風評被害に直面すると、何から手をつければ良いのか迷ってしまうことが多いのが実情です。

弁護士に相談すれば、口コミが名誉毀損にあたるのかを確認できるだけでなく、削除依頼や損害賠償請求、刑事告訴など考えられる選択肢を整理してもらえます。

さらに、各々の方法にかかる費用や時間、得られる効果も分かりやすく説明してくれるため、自分の状況に合った解決策を早い段階で選びやすくなります。

書類作成から裁判所対応までワンストップでお任せできる

解決の道筋が見えても、実際に必要な手続きを進めるのは簡単ではありません。

証拠を整えたり、削除仮処分を申し立てたり、裁判所に書類を提出したりする作業は、専門的で時間もかかります。

弁護士に依頼すれば、一連の手続きをまとめて任せられるので、余計な負担を抱えずに済みます。

普段の業務に集中できるだけでなく、精神的な不安も和らぐため、今後の安心につながるでしょう。

法的な側面から交渉を優位に進められる

悪質な口コミを書いた相手と直接やり取りをすると、感情的になってしまったり、余計なトラブルを招いたりすることがあります。

弁護士が代理人として交渉に入ることで、法律に基づいた冷静な主張ができ、相手にもしっかりとした圧力を与えることが可能です。

その結果、口コミの削除や損害賠償、再発防止の取り決めなど、有利な条件を引き出しやすくなります。

弁護士が前面に立ってくれることで、安心して解決に向かえるのは、大きな強みと言えるでしょう。

まとめ

クリニックの口コミは、経営状況や患者からの信頼に直結するため、否定的な投稿や根拠のない噂が広がれば、大きなリスクを抱えることになります。

そのため、専門的な視点から適切な対応を取ることが欠かせません。

弁護士法人広尾有栖川法律事務所は、特に、美容医療や歯科分野のクリニックの口コミをめぐる名誉毀損や悪質投稿への対応に実績があります。

削除手続きや発信者特定だけでなく、患者さんからのクレームや労務トラブルにも丁寧に対応いたします。

経営と診療の両面で安心出来る環境作りのために、まずはお気軽にご相談ください。

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