利用規約と契約書の違いとは?起業初期に知っておきたいポイントを解説

五十嵐沙織弁護士
五十嵐沙織弁護士
(第一東京弁護士会)
この記事の監修者:
五十嵐 沙織(弁護士法人広尾有栖川法律事務所)
中央大学大学院法務研究科修了。freee株式会社にて企業内弁護士として東証マザーズ(現グロース)の上場を担当。現在弁護士法人広尾有栖川法律事務所を開業し、スタートアップ企業の伴走支援や、医療、人事労務に注力。弁護士のプロフィールはこちら

起業を始めたばかりの時期は、サービスを提供するうえで必要なルールをどう整えるかが大切です。

特に、利用規約と契約書の違いを理解しておくことは、安心してビジネスを進めるための基本になります。

契約書は特定の相手方との間で条件を取り決めるために交わすものですが、利用規約はオンラインサービスやECサイトなど多くの人に一律で適用できる仕組みです。

それぞれの違いをきちんと理解することで、事業に合った方法を選び、信頼されるサービスを築くことにつながります。

本記事では、利用規約と契約書の違いと活用のポイントを分かりやすく解説していきます。

利用規約と契約書・約款の違いとは

利用規約と契約書・約款の違いとは

契約書は、取引先との間で一つひとつ内容を取り決めるための文書で 、商品の内容や金額、納期、責任範囲などを具体的に書き込みます。

利用規約は、ネットショップやオンラインサービスなど、不特定多数の利用者に同じ条件でサービスを提供する際に使われるものです 。利用者が同意することで契約の一部として法的効力を持ちます。

約款は、保険や交通機関など多くの人と一括で契約を結ぶときに使われる定型的な条項で 、利用規約と近い性質を持っています。

ただし、「規約=約款」とは限らないため、区別して理解するようにしましょう。

書面の種類 特徴 主な利用場面
契約書 特定の相手と個別に条件を定める 業務委託契約、売買契約、賃貸契約など
利用規約 不特定多数に一律の条件を提示 ECサイト、オンラインサロン、会員制サービス
約款 定型的な契約条項を多数に適用 保険契約、鉄道や航空などの交通機関

女性起業家にとって利用規約が心強い理由

女性が起業してサービスを始めるとき、利用規約を整えておくと運営がスムーズになります。

また未然にトラブルを防ぎながら、信頼性を高める仕組みとしても役立ちます。

サービス運営をスムーズに進められる

利用規約を用意しておくことで、サービスの条件や利用方法を事前に分かりやすく示すことが出来ます。

料金の仕組みや利用範囲、禁止されている行為などをルール化しておけば、毎回同じ説明を繰り返さなくても済むため、運営がずっとスムーズになります。

起業したばかりの時期は時間に余裕がない方も多いため、手間を減らせる点は大きな安心につながります。

契約書のように一人ひとりと交わす必要が無いので、効率良く事業を進められる仕組みとして機能するでしょう。

ユーザーとのトラブルを未然に防げる

サービスを提供していると、返金やキャンセルを巡って、意見が食い違うことがあります。

利用規約にルールを書いておけば、利用者も事業者もあらかじめ確認できるため、無用な誤解やトラブルを避けやすくなります。

例えば 「どのタイミングまでキャンセルできるか」「返金は可能かどうか」 を明確にしておけば、問い合わせがあっても落ち着いて対応できます。

利用規約と契約書の違いを意識して整備することで、女性起業家にとって大きな心の支えとなり、安心してサービスを提供しやすくなります。

信頼できるサービスだと感じてもらいやすい

利用規約を明確に整えておくことで、利用者から「準備が行き届いている会社」という印象を持ってもらいやすくなります。

個人情報の扱い方やサービスの範囲、利用者が守るべきルールなどが丁寧に書かれていれば、安心感を持って利用してもらえます。

特にオンラインサービスでは、利用規約の有無で信頼度が大きく変わることもあることを留意しておきましょう。

利用規約をトラブル防止に活かすポイント

サービスを安心して続けていくためには、トラブルを防ぐ工夫が欠かせません。

利用規約を整えておくことで、安心感のある仕組みを事前に用意することが出来ます。

利用規約は“法律上の契約内容”として認められることもある

利用規約は単なるサービスに関する説明文書ではなく、利用者が同意をすれば、原則として契約の内容として法的効力を持ちます。

例えば、料金の支払い方法やキャンセルに関する条項は、原則として契約書と同様に法的効力を持ちます。

ただし、消費者契約法 or 個人情報保護法などの法律に反する内容は無効とされる可能性があります。

例えば、「返金は一切できません」と明記していても、消費者保護の観点から無効とされるケースがあるのです。

利用規約と契約書の違いを理解して、自社のサービスに関わる法律をきちんと確認しておくことは、起業初期において必要不可欠な準備だといえるでしょう。

トラブル防止には「クリック1つの同意」が有効

オンラインサービスやネットショップでは、利用者が「同意する」ボタンをクリックする仕組みを設けるのが一般的になっています。

クリックによる同意を得ることで、利用者の規約内容に対する合意が証拠として残るため、後から「規約を知らなかった」と主張されても対応しやすくなります。

特に、キャンセルポリシーや返金ルール、広告メール配信などはトラブルが起こりやすい部分です。

事前にクリックによる同意を得ておくことで、事業者側にとっても利用者側にとっても安心できる仕組みが実現します。

ユーザーに不利益が出ないように配慮する

利用規約は事業者が一方的に作成するものであるため、利用者にとって不利益の大きい条項が含まれている場合があります。

例えば「いかなる場合も損害賠償は負わない」といった免責条項や、実態に合わない高額なキャンセル料の規定は、消費者契約法によって無効と判断されることがあります。

過去には、大手企業の利用規約が「利用者の利益を軽視している」として炎上し、社会的な信頼を損なった事例もありました。

利用規約と契約書の違いを理解したうえで、利用者の立場に配慮した内容に整えておくことが、長く信頼されるサービスを育てていくためには欠かせません。

起業初期に作成する利用規約のポイント

起業初期に作成する利用規約のポイント

起業を始めたばかりの時期は、サービスの内容やルールを分かりやすく整えておくことが大切です。

利用規約を準備しておけば、利用者にも安心してもらえる土台を作れます。

料金や支払い方法を分かりやすく定めておく

サービスを利用する際に必要となる料金や支払い方法を、利用規約の中で事前に示しておくことは非常に大切です。

内容が曖昧なままだと 「想像以上に高かった」「支払い方法が分からない」 といった誤解や不満につながりやすくなります。

利用規約には具体的な金額を書かずに「申込フォームや案内ページに基づく」とする方法もあり、将来的に料金を変更する際の柔軟さを保つことも可能です。

起業初期のサービスは状況が変わりやすいため、利用規約と契約書の違いを意識しながら、丁寧に定めておくようにしましょう。

キャンセル・返金ルールをしっかり書いておく

キャンセルや返金を巡る行き違いは、サービス提供者にとっても利用者にとって大きなストレスになりがちです。

トラブルを防ぐために、利用規約の中で「キャンセルできる期限」や「返金の有無や方法」を明確に示しておくことが重要です。

ただし、消費者契約法の観点から、利用者に過度な不利益を与える規定は無効となる可能性がある点に留意しておきましょう。

例えば「どのような場合でも返金不可」と一方的に定めるのは避けるべきです。

利用規約は契約書と異なり、多くの利用者に一律で適用されるため、公平かつ明確な内容にすることが望ましいです。

プライバシーや個人情報の扱いをきちんと示す

多くのサービスでは、申込みや利用の過程で利用者の氏名や住所、メールアドレスなどの個人情報を取り扱うことになります。

そのため利用規約には「どのような情報を収集するのか」「どのように利用・保管するのか」を明示することが欠かせません。

さらに、第三者への提供や外部サービスとの共同利用を行う場合には、その点をきちんと書いておく必要があります。

実務では、利用規約とは別にプライバシーポリシーを設けて補完するケースが一般的です。

個人情報の取り扱いは利用者の安心感に直結する部分ですので、出来るだけ具体的に記載しておくと信頼を得やすくなります。

利用規約と契約書はどのように使い分けるべき?

事業内容や取引の性質によって、契約書で細かく定めるべきケースと、利用規約で一律のルールを示す方が適しているケースが存在します。

高額商品や長期の取引は必ず契約書を交わす

大きな金額が動く取引や長期にわたる契約では、きちんと契約書を取り交わしておくことが安心につながります。

契約書は取引ごとに作成され、商品やサービスの内容、納期、支払い条件、万一トラブルが起きたときの対応まで細かく定められます。

例えば、高額なコンサルティング契約や数年にわたるサービス提供を契約書無しで進めてしまうと、 「約束していた内容が違うのでは?」 といった行き違いが生じやすくなります。

利用規約は多くの人に一律で適用するルールですが、大切な取引先との関係には契約書を用意しておく方が、信頼関係を着実に築くことが出来ます。

ECサイトやオンラインサービスは利用規約で対応可能

ネットショップやオンラインサービスのように、多くのお客様に同じ条件でサービスを提供する場合は、利用規約を整えておくことが効果的です。

利用規約には、サービスの内容や料金、支払い方法、禁止事項、利用停止の条件などをまとめて記載し、ユーザーが同意することで契約が成立します。

民法上は「定型約款」として扱われるため、一定の要件を満たせば改定も可能です。

個別の契約書を一人ひとりと交わすのは現実的ではないため、利用規約があることでスムーズにサービスを提供できます。

ECやオンライン事業を始める起業家にとって、利用規約はビジネスを守るための心強い仕組みとなるでしょう。

契約書が無いとトラブル時に不利になりやすい

契約書を交わさずに取引を進めた場合、トラブルが起きたときに「何をどう約束していたか」を証明するのが難しくなります。

メールや口頭のやり取りだけでは、内容が曖昧になりやすく、相手の主張を覆せない状況に追い込まれることもあります。

特に支払いに関するトラブルや納期の遅れ、成果物の範囲を巡る行き違いなどにおいては、契約書の有無が大きな意味を持ちます。

利用規約と契約書の違いを理解し、それぞれに合った形を選ぶことで、リスクを減らしながら安心してビジネスを続けることが出来るでしょう。

まとめ

起業を始めたばかりのときは、サービスを提供するうえで「契約書」と「利用規約」の違いを理解しておくことがとても大切です。

契約書は特定の相手と細かく条件を決める文書であり、利用規約は多くの人に一律のルールを示すための仕組みです。

さらに、保険や交通機関でよく使われる約款も知っておくと安心です。

弁護士法人広尾有栖川法律事務所では、スタートアップや小規模事業の立ち上げをはじめ、契約書や利用規約の整備など、事業を安心して進めるためのサポートを行っています。

起業初期の不安を少しでも軽くしたいときや、自分に合った契約の形を整えたいときには、どうぞお気軽にご相談ください。

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