

(第一東京弁護士会)
五十嵐 沙織(広尾有栖川法律事務所)
歯科医院を運営していると、患者さんとのトラブルやスタッフの労務問題、契約に関する悩みなど、さまざまな場面で法律の知識が必要になることがあります。
歯科医院でトラブルが発生したとき、弁護士のサポートがあると心強いでしょう。
特に、治療費の未払い対応やクレームへの対処、スタッフとのトラブルの解決など、専門的なアドバイスを受けることで、安心して医院の運営に集中しやすくなります。
本記事では、歯科医院における弁護士の役割や、失敗しない弁護士の選び方について詳しくお伝えします。
歯科医院で起こりやすいトラブルとは?
歯科医院では、患者とのトラブルやスタッフの労務問題、治療費の未払いなど、さまざまな問題が起こることがあります。
治療の説明が十分でなかったり、働く環境に不満があったりすると、思わぬトラブルにつながることも。
歯科医院で起こりやすいトラブルを防ぐには、事前の対策や対応の工夫が大切になります。
患者とのトラブルが起こる原因とは?
歯科医院で患者とのトラブルが発生する主な原因は、治療内容への不満や患者への説明不足です。治療内容への不満も事前の説明不足が原因となっていることが多いです。
治療のリスクや期間について十分な説明がないと、患者は「こんなはずではなかった」と感じ、不満を抱きやすくなります。
特に、審美歯科や自由診療では仕上がりに対する期待が高く、些細なことがきっかけでクレームにつながることがあります。
また、リスクを受け入れず「絶対に失敗しない治療」を求める患者や、自分で治療方法を決めようとする患者も、トラブルの原因になりやすいです。
そのような患者は、過去に他の医院とトラブルを起こしていることも多く、トラブルを繰り返す可能性が高いので、特に注意をして対応する必要があります。
患者とのトラブルを防ぐには、治療前にリスクや費用について丁寧に説明し、確実に理解を得ることが大切です。
スタッフとの労務問題が経営に影響を与えることも
歯科医院では、スタッフとの労務問題が経営に影響を及ぼすことがあります。
特に、小規模な医院ではスタッフの役割が大きいため、一人でも問題が発生すると医院全体の雰囲気や業務に悪影響を及ぼします。
例えば、勤務態度が悪いスタッフを放置すると、他のスタッフのモチベーションが下がり、医院のチームワークが崩れることがあります。
また、給与や労働時間に関する問題が発生すると、スタッフが労働基準監督署に相談したり、弁護士を通じて交渉を行ったりする可能性があります。
結果として、医院の評判が悪化し、スタッフの離職が相次ぐケースも少なくありません。
スタッフとの労務問題を防ぐためには、労働契約や就業規則を整備し、トラブルが起こる前に適切な対策を講じることが大切です。
顧問弁護士に相談しながら、労務管理を適切に行うことも検討しましょう。
治療費の未払い・返金トラブルの実態
歯科医院では、治療費の未払いトラブルや返金要求が発生することがあります。
特に自由診療では治療費が高額になるため、支払いを拒否する患者や、後になって返金を求める患者が出てくるケースは珍しくありません。
未払いの主な原因は、患者の経済的な事情や、治療費の説明不足です。
例えば、治療後に「こんなに高いとは思わなかった」と言われ、支払いを渋られるケースがあります。
また、治療結果に不満を持ち、「納得できないから返金してほしい」と求められることもあります。
治療費の未払い・返金トラブルについては、治療前に費用の詳細を説明し、見積書を提示することが重要です。
また、支払い方法についても明確にし、分割払いの対応や顧問弁護士への相談体制を整えておくと、トラブルを未然に防ぐことができます。
歯科医院における弁護士の役割とは?
歯科医院では、患者とのトラブルやスタッフとの問題、ネット上の口コミなど、思わぬ場面で法的な対応が必要になることがあります。
弁護士に相談することで、リスクを減らし、万が一起こったときも冷静に対処しやすくなります。
患者トラブルの対応をサポート
歯科医院を運営していると、患者とのトラブルは避けられないことがあります。
予約の行き違いや治療の説明不足、治療結果への不満、支払いに関する問題など、さまざまなケースが想定されるでしょう。
弁護士に相談すれば、トラブルへの適切な対応方法をアドバイスしてもらえます。
例えば、クレームを受けた際の対応の仕方、患者への説明方法、記録の残し方などを学ぶことで、トラブルをスムーズに解決しやすくなります。
また、治療費の未払い問題や返金を求められた場合も、弁護士に相談することで、どのように対応すればよいのか適切なアドバイスを受けられます。
弁護士が患者とのやりとりを代理することもできるため、医院側の負担を大きく減らすことができます。
労務トラブルを防ぐためのアドバイスを提供
歯科医院では、スタッフとのトラブルも発生することがあります。
例えば、勤務態度に関する問題、給与や労働時間についての不満、解雇をめぐるトラブル、職場でのハラスメント問題などが挙げられます。
弁護士に相談すれば、スタッフとのトラブルを未然に防ぐためのアドバイスを受けることができます。
例えば、雇用契約書や就業規則をしっかり整備しておくことで、労務トラブルを防ぎやすくなります。
また、スタッフとのトラブルが発生した際に、どのように対応すれば円満に解決できるのか、具体的な助言を受けることもできます。
特に、解雇を考える場合には、適切な手続きを踏まないと法的なトラブルに発展することがあるため、弁護士からの法的助言を受けるようにしましょう。
ネット上の風評被害から歯科医院を守る
最近では、インターネット上の口コミが歯科医院の評判に大きく影響を与えるようになっています。
良い口コミが多ければ安心感につながりますが、事実と異なる悪い口コミや、悪意のある投稿が広まると、新しい患者さんが来院しにくくなってしまいます。
弁護士に相談すれば、風評被害への対策をサポートしてもらえます。
例えば、Googleの口コミやSNSの投稿が名誉毀損にあたる場合は、削除を求める手続きが可能です。 また、悪意のある口コミを書き込んだ人物を特定し、法的措置を検討することもできます。
歯科医院が弁護士を雇うメリット・デメリット

歯科医院を運営していると、患者さんとのトラブルやスタッフの雇用管理、契約のことなど、さまざまな法的な問題に直面することがあります。
弁護士に相談できる環境があると安心ですが、顧問契約には費用がかかるため、メリットとデメリットをよく考えることが大切です。
トラブル発生時に迅速な対応ができる
歯科医院を運営していると、患者さんとのトラブルやスタッフの労務問題など、思いがけない法的な問題に直面することがあります。
治療に関するクレームや治療費の支払いに関するトラブル、従業員の解雇をめぐる問題など、対応を間違えると長引いてしまい、医院の評判にも影響を与えかねません。
顧問弁護士がいると、トラブルが発生したときにすぐに相談でき、適切な対応を取ることができます。
例えば、患者さんとのトラブルが深刻になる前に弁護士にアドバイスをもらうことで、円満な解決につながることもあります。
また、万が一訴訟になった場合でも、弁護士がサポートしてくれるので安心です。
労務管理や契約のリスクを減らせる
歯科医院では、スタッフの雇用契約や勤務条件の整備、解雇手続きなど、労務管理に関するさまざまな業務があります。
歯科医院のルールがしっかり整備されていないと、未払いの残業代を請求されたり、解雇をめぐるトラブルに発展したりする可能性があります。
顧問弁護士がいれば、医院の規模や状況に合わせて雇用契約書や就業規則の作成・リーガルチェックをしてもらうことができ、リスクを未然に防ぐことができます。
また、スタッフとの間でトラブルが起きたときも、弁護士が適切な対応をアドバイスしてくれるので、スムーズな解決につながります。
さらに、医院の経営には、賃貸借契約や設備投資の契約など重要な契約の締結も不可欠です。
契約を結ぶ際に弁護士に確認してもらうことで、不利な条件で契約を結んでしまうリスクを減らすことができます。
患者対応の負担を軽減し、本業に集中できる
治療に関するクレーム対応や、治療費の未払いへの対応は、院長やスタッフにとって大きな負担となることがあります。
特に、患者さんへの対応が長引いてしまうと、本来の診療業務に支障が出ることもあります。
顧問弁護士がいると、患者対応の問題を弁護士に任せることができるため、院長やスタッフは診療に集中しやすくなります。
例えば、治療費の返金を求められた場合に、弁護士のアドバイスをもとに適切に対応すれば、感情的な対立を防ぎながら解決につなげることができます。
また、悪質なクレーマーへの対応についても、弁護士がサポートしてくれるため、精神的な負担を軽減できます。
医院の評判を守るためにも、患者さんとのトラブルを適切に解決できる環境を整えておくことは、とても大切です。
顧問契約にはコストがかかる
弁護士と顧問契約を結ぶことでさまざまなメリットがありますが、一定の費用がかかる点は考慮する必要があります。
顧問契約の料金は契約内容やサポートの範囲によって異なりますが、月額数万円から十数万円ほどが一般的です。
医院の規模や相談の頻度によっては、コストが負担に感じることもあるかもしれません。
しかし、法的トラブルが起きたときに弁護士に依頼すると、訴訟費用や解決までの時間がかかるため、結果的に大きな出費につながることもあります。
そのため、顧問弁護士の存在は、医院の安定した経営に大いに役立ちます。
また、コストを抑える方法として、必要最低限のサポートを受けるプランを選ぶのも一つの方法です。
例えば、必要最低限の相談だけを行うプランにしておき、必要に応じて追加のサポートを依頼する形にすることで、無駄な出費を減らすことができます。
失敗しない弁護士の選び方
弁護士を選ぶときは、歯科医院のトラブルに詳しいか、費用や契約内容が納得できるか、どのような相談方法(対面・オンライン・メール・チャットなど)が可能か、相談しやすい雰囲気かなどをチェックしましょう。
じっくり比較して決めることで、安心して頼れる弁護士を見つけやすくなります。
歯科医院のトラブル対応に強い弁護士を選ぶ
歯科医院を経営していると、治療をめぐるトラブルやクレーム対応、スタッフの労務問題、物件の賃貸借契約に関するトラブルなど、さまざまな法律の問題が発生することがあります。
あらゆる場面に備えて、弁護士を選ぶ際には「歯科医院の法的トラブルに詳しいかどうか」が大きなポイントになります。
弁護士によって得意な分野は異なります。相続や交通事故を専門とする弁護士もいれば、医療機関の法律問題に詳しい弁護士もいます。
歯科医院に関わる法律は、医療法、労働基準法、消費者契約法など幅広いため、過去に歯科医院や医療関係のトラブルを解決した実績がある弁護士を選ぶと安心です。
弁護士を探すときは、事務所のホームページや紹介ページをチェックし、歯科業界のトラブルに対応した経験があるかどうかを確認してみるとよいでしょう。
無料相談を活用して、具体的な対応策やアドバイスを聞いてみるのもおすすめです。
費用や契約内容を比較して検討する
弁護士に依頼する際は、どれくらいの費用がかかるのかを事前にしっかり確認することが大切です。
特に顧問契約を検討している場合は、毎月の料金だけでなく、追加で発生する可能性のある費用や、サポートの範囲についても比較しておきましょう。
顧問契約には「毎月の定額で相談し放題」「一定の回数まで無料相談が可能」など、さまざまなプランがあります。
一方で、スポットで依頼する場合は、相談料・着手金・成功報酬などの費用が発生します。
契約内容によっては、予想以上の費用がかかることもあるため、事前に見積もりを出してもらうと安心です。
複数の弁護士事務所に問い合わせて、費用や契約内容を比較しながら検討すると、納得のいく選択がしやすくなります。
相談しやすく信頼できる雰囲気で決める
弁護士に依頼するときは、信頼して相談できるかどうかも重要なポイントです。
法律の相談は専門的な話になることが多いため、わかりやすく説明してくれる弁護士を選ぶことで、安心してやり取りができます。
特に、歯科医院の経営に関する相談では、治療やスタッフ管理といったデリケートな話題に触れることもあります。
「この先生なら話しやすい」と感じられる弁護士を選ぶと、何かあったときにもスムーズに対応できるでしょう。
また、レスポンスの速さも大切なポイントです。連絡が取りづらかったり、返信が遅かったりすると、トラブルが発生した際に迅速な対応ができません。
初回の相談時に、どれくらいスムーズにやり取りできるかを確認しておくと、実際に依頼した後の流れもイメージしやすくなります。
まとめ
歯科医院では、患者とのトラブルやスタッフの労務問題、契約に関するリスクなど、法律が関わる課題に直面することが少なくありません。
治療に関するクレームや未払い、スタッフとのトラブルは、対応を誤ると医院の経営に影響を及ぼすことがあります。
歯科医院における経営リスクを減らすためにも、弁護士と連携し、事前に対策を整えておくことが大切です。
弁護士を選ぶ際は、歯科医院の事情に詳しく、相談しやすい相手かどうかを確認してみましょう。
費用や契約内容も比較し、必要なサポートを受けられる弁護士を選ぶことで、安心して医院を経営しやすくなります。