医療法人・クリニックの顧問弁護士とは?具体的な役割や依頼するメリット・デメリットについて解説します

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五十嵐沙織弁護士
五十嵐沙織弁護士
(第一東京弁護士会)
この記事の監修者:
五十嵐 沙織(広尾有栖川法律事務所)
中央大学大学院法務研究科修了。freee株式会社にて企業内弁護士として東証マザーズ(現グロース)の上場を担当。現在広尾有栖川法律事務所を開業し、スタートアップ企業の伴走支援や、医療、人事労務に注力。弁護士のプロフィールはこちら

医療法人・クリニックを経営している中で、法的なトラブルに直面する機会も多いのではないでしょうか。本業で多忙な医師自身が法的トラブルを自ら適切に対処するのは難しい側面があり、ご自身での対応を試みた結果、かえって問題が複雑になり悪化したというケースも見受けられます。

顧問弁護士に依頼することで、クレーム対応、労務問題、法的リスクに関する相談や助言、医療費未払いの問題など様々な法的な問題にも速やかに対応可能です。

当記事では医療法人・クリニックの顧問弁護士の役割や、選定時のポイントについてご紹介します。ぜひ参考にしてください。

医療機関やクリニックの顧問弁護士とは?

顧問弁護士とは、企業などが特定の弁護士と顧問契約を結び、法的なアドバイスや問題に対処する弁護士のことを指します。

顧問弁護士は未然にトラブルを防ぎ、トラブルが発生した際にも、適切な対応によって事態を沈静化させる対応を行います。

医療機関やクリニックにおける顧問弁護士は、広告のチェック、労務全般や法的リスクに関する相談や助言、クレーム対応、医療事故への対応など、日常的な業務から緊急時の問題解決までサポート可能です。

顧問弁護士の存在によって、医療機関やクリニックの円滑な運営と法的リスクの最小化に貢献します。

一般企業の顧問弁護士との役割の違い

医療機関やクリニックの顧問弁護士は、法律面から下記のようなサポートを行います。

  • 患者からのクレームやトラブルに対する相談対応
  • 従業員に関する労務の相談対応
  • 医療費の未払い問題に対する対応

患者からのクレームやトラブルに対する相談対応

医療法人やクリニックでは、患者やその家族からクレームがよく寄せられます。クリニック側に問題が無かったとしても、トラブルが長期化することで、医師やスタッフが疲弊してしまうリスクがあります。

悪質なクレームや、院内では手に負えない問題だと判断した場合は、顧問弁護士に相談しましょう。顧問弁護士が初期段階から適切な対応を取ることで、大きな問題に発展することなくトラブルを解決できます。

従業員に関する労務の相談対応

医療法人やクリニックにおいても、従業員との間で、労務に関するトラブルが発生することがあります。規模の小さいクリニックでは、人事労務担当者を置いておらず、就業規則やハラスメント対策が十分に整備されていないことも考えられます。

労務トラブルが発生すると、従業員が不信感を抱くことで、離職者が相次ぐリスクが想定されるほか、従業員との訴訟に発展する可能性もあり、通常のクリニックの運営や患者対応に支障をきたすことも避けられません。

顧問弁護士は、労務に関する相談、就業規則や諸規程の整備、法的トラブルの解決などでクリニックをサポートします。顧問弁護士のサポートによって、労働トラブルを未然に防ぎ、問題が起きても早期に解決することができます。

医療費の未払い問題に対する対応

医療法人やクリニックにおける医療費未払い問題は非常に深刻です。応召義務があるため、クリニックは医療費未払いの患者の診察を拒否できません。

未払いの医療費が積み重なると回収が難しくなりますが、顧問弁護士からの支援を受けることで、適切なタイミングにて対応が可能です。

特に高額な医療費や外国人の医療費、また死亡が予想される患者の場合は、対応策を院内で確立することが不可欠です。顧問弁護士の主導のもと、未払い問題への対応マニュアルを整備しましょう。

それでも回収できない場合は、顧問弁護士からの内容証明郵便や裁判所の支払督促制度、訴訟などの手段を検討する必要があります。

医療機関やクリニック顧問弁護士を選ぶ時の3つのポイント

医療機関やクリニック顧問弁護士を選ぶ時の3つのポイントをご紹介します。

  • 医療分野に関する知見・豊富な経験を有している
  • 人柄やコミュニケーションで相性が良いと感じられる
  • 緊急のトラブルが発生したときに迅速に対応してくれる

医療法人・クリニックの経営に関する知見を有している

医療法人・クリニックの経営者は、日々多くの経営判断を下さなければなりません。

経営を行うなかでよく見られるのは、患者からのクレーム、未払い医療費の回収、従業員との労務トラブルへの対応などが挙げられます。また、クリニックの承継、医療法上の広告規制に関する対応、個人情報漏洩のトラブル、裁判所や弁護士会からの書面への対応、医師や理事の個人的なトラブルも挙げられます。

弁護士によっては、評論家的な指摘や助言に留まってしまい、実務を踏まえた有益な助言をあまり得られないこともあります。経営者が最善の判断を行うためにも、経営のパートナーとして、より具体的かつ積極的に助言をしてくれる顧問弁護士を選ぶことが求められます。

人柄やコミュニケーションで相性が良いと感じられる

顧問契約を結ぶ際には、実績や知識だけでなく、弁護士との相性も重視するべきです。弁護士との相性が合わないと感じる場合、顧問契約を結んだとしても、なかなか相談しにくいと感じることがあります。

些細な問題だと思って放置してしまった結果、早期に弁護士に相談すべきだった事案に発展してしまうなど、顧問弁護士とのミスコミュニケーションよって生じる弊害は決して無視できません。

そのため面談などを通じて相性を確認することが重要です。実際に話してみることで、肩書や実績や公式HPのプロフィールとは違った印象を得られるかもしれません。また連絡手段(電話やメールやチャットツール)など、希望通りに対応してもらえるかも確認しておきましょう。

緊急のトラブルが発生したときに迅速に対応してくれる

経営者は迅速な経営判断が求められるため、顧問弁護士とのコミュニケーションの取りやすさやレスポンスの速さが重要です。医療法人やクリニックでは、土日祝日や夜間に緊急のトラブルが発生することも想定されます。

そのため顧問弁護士を選定する際には、夜間や休日の対応でも抵抗無く受け入れてくれるかを確認するようにしましょう。弁護士の業務時間外であっても仕事用の携帯電話に連絡を取れるのか、通常時の連絡でも12~24時間以内には返信を貰えるか、なども対応時の基準となります。

顧問弁護士に依頼する3つのメリット

顧問弁護士に依頼する3つのメリットをご紹介します。

  • 法的な問題に速やかに対応できる
  • 紛争の無用な長期化や拡大を防ぎ、リスクを最小限に抑えられる
  • 紛争が発生する以前から、労務管理や医療安全管理体制の構築などのアドバイスを受けられる

法的な問題に時間を空けずに対処できる

顧問契約を結んでいない場合、弁護士の選定から案件の受任までに一定の期間がかかってしまうことから、対応が後手に回ってしまうことが想定されます。

顧問弁護士として契約していれば、他の依頼者よりも優先的に対応してもらいやすく、時間を空けずに問題に対処してもらえます。

リスクを最小限に抑えられる

早期に顧問弁護士に相談を行う上で、リスクを最小限に抑えることができます。

弁護士も経営者もお互いの業務上でコミュニケーションを重ねる中で、経営状況や個人的な悩みなどを共有しやすい体制が生まれます。

そのため法的な問題が発生しても、弁護士が背景を熟知しているため、被害を最小限に抑えられることがメリットです。

紛争が発生する以前から、労務管理や医療安全管理体制の構築などのアドバイスを受けられる

顧問弁護士に依頼することで、すでに発生している問題へのサポートだけでなく、労務管理や医療安全管理体制構築などのアドバイスを受けることもできます。弁護士によって専門とする領域は様々ですが、医療法人やクリニックを強みとする弁護士であれば、将来の紛争の発生を未然に防ぐ体制整備のための助言を受けることも可能です。

顧問弁護士による経営上のアドバイスは、クリニックの持続的な成長や発展に寄与するでしょう。

顧問弁護士に依頼するデメリット

顧問弁護士に依頼する唯一のデメリットは、継続的に顧問料が発生することです。

ただし、トラブルが生じるたびに弁護士に依頼を行うとなれば、弁護士選びの選定に時間がかかるほか、スポットでの依頼の場合、結果的に高額な弁護士費用がかかってしまうこともあります。

さらに、クリニックの事情や問題の背景を把握していないため、限定的なサポートしか受けられず、適切な問題解決に進まないリスクもあります。

広尾有栖川法律事務所について

広尾有栖川法律事務所の代表弁護士は、医療法人での勤務経験(業務委託)やクリニックの顧問などの経験を有しており、医療機関の実情を踏まえたアドバイスの提供が可能です。債権回収、労働問題、広告のチェック、クレーム対応、紛争対応等の幅広い業務に対応しております。

当事務所が重視していることは、クライアント様のご状況やご意向をしっかりと丁寧に聴き、評論家的な助言に終始することなく、問題解決のための最善な方法を提案させていただくことです。

まとめ

当記事では医療法人・クリニックの顧問弁護士の役割や、選定時のポイントについてご紹介しました。

顧問弁護士に依頼を行うことで、リスクを最小限に抑えながら、トラブルの発生時にも迅速に対応します。経営上のアドバイスを受けることで、現状の課題改善に向けた取り組みにも着手しやすくなるでしょう。

もしも医療法人・クリニックの顧問弁護士選びにお悩みであれば、広尾有栖川法律事務所までお気軽にご相談ください。

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