(第一東京弁護士会)
五十嵐 沙織(広尾有栖川法律事務所)
近年では美容目的で脱毛を行うことが流行しており、美容院のような気軽な雰囲気で施術を受けることができます。
しかし、脱毛の施術中に肌にやけどを負ってしまい、火傷の痕が残ってしまったという事例も数多く見受けられます。
当記事では脱毛によってやけどを負ってしまった場合にどのように対処すれば良いのか、当事務所の弁護士が解説いたします。ぜひ参考にしてください。
目次
美容や医療の脱毛業界の市場について
国内の美容医療市場は、2021年以降は患者の受診控えが改善されて、2022年は行動制限も緩和されたことから、市場は更に回復傾向にあります。脱毛の施術も好調です。
出典:美容医療市場に関する調査を実施(2023年) |矢野経済研究所
脱毛を行う理由は、肌を綺麗に見せて清潔感を保てる、自己処理が面倒だと感じる、周囲の目が気になるなどが挙げられます。
将来の展望として、美容医療市場に参入する医療施設の増加、女性の美容医療への心理的ハードルの低下、男性需要の拡大など、2024年以降も拡大基調で推移する見通しです。
脱毛業界の発展によって生じている問題とは
エステサロンや医療機関で広く行われている脱毛施術ですが、2012年から2017年2月末までの5年間で、皮膚障害ややけどの被害が964件にわたって国民生活センターに報告されています。
実際に、脱毛が原因で以下のような被害例が発生しています。
出典:脱毛施術による危害(独立行政法人国民生活センター:くらしの危険338)
インターネットの情報はメリットのみが強調された広告やWebサイトも含まれているため、事前に自ら情報収集を行うことが大切です。また施術前にエステサロンやクリニックで十分な説明を求めるようにしましょう。
当事務所でも、脱毛に関するトラブルのお問い合わせを頂くことが大変多いのが実情です。「脱毛のコース料金の返金を求めたい」、「やけどによる治療費や慰謝料を請求したい」といったお悩みがあれば、ぜひお早めにご相談ください。
脱毛でやけどを負った場合、慰謝料を請求することはできる?
脱毛でやけどを負った場合、慰謝料を請求することは可能です。慰謝料の考え方や、脱毛によるやけどで慰謝料を請求できる条件などの疑問にお答えします。
慰謝料とは精神的損害に対して支払われるお金
慰謝料とは、精神的損害に対して支払われるお金です。
例えば、やけどの例でいえば、脱毛の施術によって、やけどを負い、治療のための通院を余儀なくされた場合のその通院の苦痛・労力(これに対する慰謝料を通院慰謝料といいます)や、治療を継続してもやけど痕が残ってしまった場合のその精神的な苦痛(これに対する慰謝料を後遺障害慰謝料といいます)をお金に換算して、エステサロンやクリニックに支払らってもらい、被害の回復を図るものです。
脱毛によるやけどで慰謝料を請求できる条件とは
脱毛によるやけどで慰謝料を請求できるケースとしては、エステサロンやクリニックの施術に過失(注意義務違反)があった場合や、施術前にリスク等に関する説明義務違反がある場合です。
脱毛によるやけどで慰謝料を請求するために必要な要件は以下の通りです。
- 故意又は過失によること
- 被害者の権利又は法律上保護される利益を侵害したこと
- 損害が発生したこと
- 行為と損害との間に因果関係があること
慰謝料請求は法律の専門知識が要求されることから、お悩みの方は弁護士に相談することをおすすめします。
やけどの部位や大きさによって慰謝料の金額に差が生じる
脱毛の部位には、わき・脚・VIO・顔・腕・背中・お腹などが挙げられますが、一般に、露出が多い部位と少ない部位では、慰謝料の金額の相場に差があるほか、やけど痕の大きさや個数によっても、慰謝料の金額は異なります。
また、被害者の職業によっても慰謝料が変動する可能性も考えられます。例えば、ファッションモデルの方が顔にやけどを負った場合には、仕事への影響を考慮し、慰謝料が高額に算定される場合があります。
脱毛コースのコース料金は返金してもらえる?
脱毛によるやけどが発生した場合、脱毛コースの料金をエステサロンやクリニックに返金を求めることが可能です。
ただし、実際に、返金が得られるかどうかや、返金の金額については様々な条件によって異なります。例えば、具体的には以下の通りです。
返金の有無や解約手数料については、契約書や約款に記載されていることがありますので、返金を希望する場合には、まず契約書等を確認してみましょう。
契約書には返金不可と記載されている場合でも、エステサロンやクリニックに交渉をすることで返金が得られることがありますので、諦めずに弁護士に相談してみることが重要です。
脱毛でやけどが発生してから慰謝料を請求するまでの流れ
脱毛でやけどが発生してから慰謝料を請求するまでの流れを、具体的に解説します。
- 異常を感じた時点で施術を中止し、写真で記録する
- エステサロンやクリニックの担当者・責任者に連絡する
- 病院で診察を受けて診断書を書いてもらう
- 担当者・責任者と話し合う
- 事態が解決に向かわなければ弁護士へ相談
異常を感じた時点で施術を中止し、写真で記録する
施術中に強い痛みや違和感などの異常を覚えた時点で、直ちに施術を中止してください。その部位を確認し、適切な処置を施してもらうようにしましょう。痛みが一旦引いたとしても、担当者の立ち会いのもとで肌のチェックを行ってください。
また該当の部位をスマホで写真撮影して記録することも大切です。何月何日の何時頃にどのような強い痛みや違和感といった異常があったのか、担当者の名前などもメモして控えておきましょう。
エステサロンやクリニックの担当者・責任者に連絡する
痛みがなかなか引かない、明らかに肌に異常が生じている場合には、今後の施術を中止する旨を施術先に伝えてください。皮膚科等を受診し、早めに治療を受けるようにしましょう。施術先や施術先から紹介されたところで治療を受けるより、やけどによる瘢痕の治療を専門としているクリニックで治療を受ける方が良い場合もあるので、どこで治療を受けるかについては慎重に検討するようにしましょう。
病院で診察を受けて診断書を書いてもらう
病院で診察を受ける際には、施術方法・回数・施術の何回目でどのような症状が現れたのかなど、できるだけ正確な事実を医師に伝えるようにしましょう。診察を受けたら、診断書を書いてもらうようにしてください。
担当者・責任者と話し合う
医師から診断書を受け取ったら、できるだけ早めに担当者・責任者と話し合いを行います。直接話し合うためにも事前に連絡を取って、空いている時間を確認することをおすすめします。
具体的には、コース料金の返金、治療費、通院交通費、慰謝料(後遺障害慰謝料、通院慰謝料)、休業損害などが挙げられます。相手方が誠実に応じてくれそうか、話し合いの中で判断するようにしてください。
エステサロンやクリニックが誠実に対応し、支払いを行ってくれそうであれば、具体的な金額について話を進めていきます。しかし、エステサロンやクリニックが誠意のない対応を取る場合や、金額面で話し合いがまとまらない場合には、弁護士に相談することを検討しましょう。
事態が解決に向かわなければ弁護士へ相談
エステサロンやクリニックとの話し合いで事態が解決に向かわなければ、弁護士に相談するべきです。
本人が交渉しても全く支払いに応じてくれない場合でも、弁護士による交渉では支払いに応じてくれるケースも少なくありません。
法律事務所では、訴訟などの手続だけではなく、弁護士が代理人となって、エステサロンやクリニックと支払いの交渉を行うことが可能です。
弁護士があなたの代理人となってアドバイスだけでなく、返金交渉まで対応してくれることは大きなメリットです。医療問題を取り扱っている弁護士をホームページやポータルサイトなどで探してみましょう。
まとめ
脱毛は美容面から高い効果を期待できる施術である一方、近年ではやけどなどの肌トラブルも数多く見受けられます。もしも脱毛を通して肌に異常が生じた場合は、速やかに医療機関を受診し、施術先に問い合わせを行うようにしましょう。
もしも事態が進展せずに不安を感じているのであれば、諦めずに弁護士への相談をおすすめします。
広尾有栖川法律事務所では、ご依頼者様から脱毛によるやけどに関するお問い合わせを数多く頂いており、慰謝料請求の実績が多数ございます。初回相談は無料で受け付けていますので、少しでもお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。