【事例紹介】矯正治療のトラブル事例と対処法。終わらない矯正治療で返金は可能?

五十嵐沙織弁護士
五十嵐沙織弁護士
(第一東京弁護士会)
この記事の監修者:
五十嵐 沙織(弁護士法人広尾有栖川法律事務所)
中央大学大学院法務研究科修了。freee株式会社にて企業内弁護士として東証マザーズ(現グロース)の上場を担当。現在弁護士法人広尾有栖川法律事務所を開業し、スタートアップ企業の伴走支援や、医療、人事労務に注力。弁護士のプロフィールはこちら

本記事では、実際に当事務所で対応した矯正治療の返金トラブルに関する事例を通じて、矯正治療における法的なポイントや、トラブルが起きた際の対処法について詳しくご説明します。

矯正治療トラブルが増えている背景

昨今、矯正治療に関するトラブルの相談が増えています。矯正治療は数ヶ月から数年に及ぶ長期の治療であることが多く、治療途中で患者さんの生活環境が変わったり、治療方針に不満が生じたりして「治療をやめたい」と希望されるケースも少なくありません。

その際、歯科医院側と患者さんとの間で治療期間や費用、返金のルールについて認識のズレが生じ、トラブルに発展することがしばしばあります。特に「返金不可」と説明され困惑しているという相談が寄せられています。

矯正治療に関するトラブルの中で最も多いのが、「治療が計画どおりに進まず、終了時期が大幅に遅延してしまうケース」です。

その結果として患者さんが中途解約を申し出たにもかかわらず、歯科医院側が返金に応じないという事態が発生し、患者さんが不満を抱えて弁護士に相談に来られることが増えています。

事例の概要

当事務所で実際に対応した矯正治療の返金トラブルの事例について紹介します。

患者さんは当初、「矯正治療の想定期間は1年半」と説明を受け、治療を開始しました。しかし、治療開始から約3年半が経過しても治療が終了しませんでした。

患者さんは、治療が終わらないことに不安を抱き、他の矯正歯科にセカンドオピニオンを求めたところ、「不正咬合」と診断され、今後の治療に1年程度かかる状態であることを説明されました。

それを知った患者さんは、矯正治療の中途解約を申し出ましたが、歯科医院側は返金に応じなかったため、当事務所にご相談をいただいたという事例です。

矯正治療契約の性格

矯正治療の契約は、患者さんが矯正歯科医院に対して治療行為を委託する契約であり、法的には「準委任契約」という性格を有します。

大切なのは口頭での説明だけでなく、書面で契約内容を明確にしておくことが重要です。特に、以下の点がポイントになります。

  • 治療期間の見込み
  • 治療計画と費用
  • 中途解約時の費用精算ルール
  • 返金の扱い

事前にこれらが明確に説明され、患者さんが十分に理解していれば、トラブルは未然に防ぐことができます。ところが実務上では、「返金に関する条件が明確に記載されていない」「説明が十分ではない」といった例が散見され、トラブルへとつながっています。

なお、契約書に「途中でやめても返金なし」と書かれていても、消費者契約法の観点から、患者さんに一方的に不利な内容であれば無効とされるケースもありますので、「返金なし」との記載があってもすぐに諦める必要はありません。

本件の争点

契約書に返金の定めがない場合には、民法のルールに従います。

民法では、準委任契約が途中で終了した場合には、「履行の割合」応じて報酬を請求できるルールとなっています。

そのため、矯正治療を途中で解約した場合には、「どの程度の治療が完了したといえるのか?」という点が争点となります。

治療がほぼ完了していると判断されれば、返金額は少なくなりますが、治療がほとんど進んでいなければ、返金額は大きくなります。

患者側が取るべき対処法

矯正治療のトラブルに直面した場合、患者さん自身ができる対処法としては、次のようなものがあります。

  1. 契約書や治療計画書を確認する
  2. 治療の進捗状況や今後の治療計画について説明を求める
  3. カルテの開示請求をする
  4. 第三者の矯正歯科医院に意見(治療計画・治療期間・費用)を聞く
  5. 記録を残す(メモ・録音・診断書・治療計画書・見積書の取得等)

特に治療途中で返金を求める場合、契約書や治療計画書を確認し、治療計画や返金に関する定めを正確に把握することが非常に重要です。

また、一人で交渉することに不安を感じた場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

示談交渉の経過とポイント

当事務所は、患者さんから依頼を受け、以下のとおり、代理人として歯科医院側との示談交渉を行いました。

  • 契約内容や治療計画の確認
  • 歯科医師からの説明内容についてヒアリング
  • 治療計画とのズレや進捗状況についての主張の整理
  • 主張を裏付けるための証拠(診断書等)の検討
  • 歯科医院側との交渉
  • 示談書の締結・入金確認

本件では、セカンドオピニオンで不正咬合の診断書が取得でき、転院先でほぼ治療のやり直しになることが想定されたため、矯正歯科医院に対して、支払い済みの治療費全額の返金を請求しました。

当事務所の実績

当初は、歯科医院側から約半額程度の返金の提案がありましたが、当事務所が主張を丁寧に整理し、粘り強く交渉を進めた結果、治療費のほぼ全額(頭金を除く)の返金を勝ち取ることができました。

返金問題の解決により、患者さんは納得ができる形で治療を終了し、転院先での治療に進むことができました。

まとめ

矯正治療におけるトラブルは決して珍しいことではありません。特に治療が長引いてしまったケースでは、患者さんが「説明と違う」「返金に応じない」と感じ、悩まれることがあります。

もし歯科医院側が返金に応じない場合でも、泣き寝入りする必要はありません。治療契約の性格や返金ルールの基本を理解し、契約書や治療計画書を確認することで、適切な解決に向けた第一歩を踏み出すことができます。

また、矯正治療に関するトラブルや返金請求は、法的な観点からの検討が必要になることも少なくありません。一方的に「返金はできない」と言われた場合や、説明内容に不安がある場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

当事務所は、歯科矯正や美容医療に関するトラブルについて豊富な実績があり、契約内容のチェックから返金交渉まで親身にサポートいたします。

お問い合わせ
ご相談・ご質問、お気軽にお問い合わせください。
お電話でのお問い合わせ
03-4500-1896
03-4500-1896
受付時間:9:00〜17:00(平日)
メールでのお問い合わせ
お問い合わせフォーム