スタートアップに弁護士は必要?創業期に直面しやすい法的リスクと対策を解説

スタートアップに弁護士は必要?創業期に直面しやすい法的リスクと対策を解説
五十嵐沙織弁護士
五十嵐沙織弁護士
(第一東京弁護士会)
この記事の監修者:
五十嵐 沙織(弁護士法人広尾有栖川法律事務所)
中央大学大学院法務研究科修了。freee株式会社にて企業内弁護士として東証マザーズ(現グロース)の上場を担当。現在弁護士法人広尾有栖川法律事務所を開業し、スタートアップ企業の伴走支援や、医療、人事労務に注力。弁護士のプロフィールはこちら

スタートアップは事業のスピード感が求められる一方で、法務面の対応が後回しになりがちです。

契約書の不備や労務トラブル、知財の見落としといったリスクは、企業の成長に大きく影響することがあります。

特に創業初期は法務部門を設ける余裕がない場合も多く、外部の弁護士と連携しておくことが、安心して事業を進めるための土台づくりになります。

本記事では、スタートアップをテーマに、弁護士が果たす具体的な役割や相談のポイントをわかりやすくご紹介します。

なぜ今、スタートアップに弁護士が必要なのか?

なぜ今、スタートアップに弁護士が必要なのか?

スタートアップは事業の立ち上げや拡大に意識が向きやすく、法務の整備が後回しになることも少なくありません。

早い段階で法律面を見直しておくことが、後の成長を支える土台になります。

急成長の裏に潜む法的リスクを見逃さないために

スタートアップ企業は、スピード感をもって事業を展開する反面、法務の体制が整い切らないまま走り出すことも少なくありません。

例えば、契約書の作成や管理が曖昧になっていたり、労務管理に必要な社内規程が未整備だったりといった状況が見受けられます。

法務の体制が整備されていないと、予期せぬトラブルを引き起こす要因となり得ます。

さらに、スタートアップには法務部門を設けていないケースも多いため、社内だけでの対応には限界があります。

日頃から顧問弁護士と連携しておくことで、トラブルの芽を早期に見つけ、安心して事業を進めるための土台づくりが可能になります。

小さなミスがIPOや出資に影響することも

株式上場や資金調達の過程では、会社の内部管理体制や過去の法的対応について、外部から細かな確認が行われます。

例えば、株式の発行手続きに不備がある、就業規則が未整備である、知的財産権の取り扱いが曖昧であるといった点は、外部からの評価に大きく影響する場合があります。

スタートアップの初期には、どうしても事業の立ち上げに注力しがちで、法務の優先順位が下がってしまうこともあるでしょう。

しかし、小さな見落としが後々になって、資金調達の失敗や上場準備の遅れにつながることも珍しくありません。

早い段階で弁護士が関与し、必要な整備を進めておくことで、将来の成長機会をしっかりと掴むことができるようになります。

相談できる“法務のパートナー”がいる安心感

スタートアップの経営者は、日々さまざまな意思決定を迫られます。その中には、法律の専門的な知識が求められる場面も多く含まれています。

例えば、新しいサービスの提供に際しての規制の確認や、業務委託契約の内容に関する判断など、どこまで対応すれば法的に安心かを即座に判断するのは難しいものです。

顧問弁護士が身近にいれば、会社の事業内容や背景を理解した上で、スムーズにアドバイスを受けることができます。

いつでも相談できる体制が整っていることは、経営者の心理的な負担を大きく軽減します。

法務に関する小さな疑問も、気軽に相談できる存在があることで、企業としての判断力と対応力に厚みが生まれます。

スタートアップが直面しやすい法律トラブルとは?

スタートアップ企業では、事業の立ち上げに注力する中で、法的な整備が後手に回ることがあります。

創業期に起きやすい法律トラブルを具体的に見ていきましょう。

労務トラブル:就業ルールの整備が後回しに

スタートアップでは、採用やサービスの立ち上げなど目の前の業務に追われ、就業規則や雇用契約書といった基本的な労務ルールの整備が後回しになることがあります。

例えば、残業代に関する取り決めが曖昧だったり、ハラスメントの相談窓口が設けられていなかったりすると、従業員との間で法的トラブルに発展するリスクがあります。

また、36協定を締結していない場合には、行政指導の対象となるおそれもあります。

労務面のトラブルは、経営の初期段階だからこそ起こりやすく、放置してしまうとレピュテーションの低下や法的な問題に発展しかねません。

社員が安心して働ける環境を整えることは、事業の成長を支える土台とも言えるでしょう。

資金調達の落とし穴:不利な契約で後悔しないために

事業の拡大には欠かせない資金調達ですが、契約内容について十分に検討されないまま進めてしまうケースも少なくありません。

例えば、投資契約の中に創業者にとって不利な条項が含まれていたり、経営の意思決定が難しくなってしまうといった事態が起こり得ます。

特に種類株式の設計や出資条件の交渉は、慎重な判断が求められる場面です。

スタートアップの初期は、どうしてもスピードを優先しがちですが、将来の経営権や意思決定の自由度に影響するからこそ、弁護士のサポートを受けながら慎重に契約内容を確認することが望まれます。

契約書の油断が招くトラブルと訴訟リスク

ビジネスの現場では、スムーズなやりとりを重視するあまり、契約書の内容をよく確認しないまま締結してしまうことがあります。

しかし、契約内容の不明瞭さや重要な条項の抜け漏れは、後々のトラブルの原因となります。

例えば、損害賠償の範囲が不明確だったことで、思いがけない金額を請求されたり、解約の条件を巡って紛争に発展することもあります。

スタートアップでは、契約書を社内でリーガルチェックを経ずに完結させてしまうこともあるかもしれません。

たとえ小規模な取引であっても、法的リスクを最小限に抑えるためには、事前のリーガルチェックが重要です。

商標や知財の侵害で思わぬ損害を被ることも

新しい商品名、ロゴ、サービス内容等を検討する場面では、既に登録されている商標や著作物の権利を侵害してしまうリスクにも注意が必要です。

意図せず他社の権利を侵害してしまった場合には、使用の差し止めや損害賠償の請求を受ける可能性があります。

また、自社のアイデアやブランドを守るためにも、必要な知財の出願や管理を怠ってはなりません。

特に創業初期は、手続きや調査の重要性に気づかないまま事業を進めてしまいがちですが、知的財産は企業にとっての重要な資産です。

早い段階で弁護士に相談し、権利関係をクリアにしておくことで、安心してサービス展開を進めることができます。

顧問弁護士ができること|スタートアップを支える法務の力

顧問弁護士ができること|スタートアップを支える法務の力

スタートアップを取り巻く環境では、スピードと柔軟さが求められる一方で、法務面の対応も同時に重要になります。

顧問弁護士が担う役割について、具体的に確認していきます。

ビジネスモデルが法律に違反していないかをチェック

新しいサービスや商品を考えたとき、ビジネスモデルが法令や業界ルールにきちんと適合しているかどうかは、意外と見落とされがちです。

特にスタートアップはスピード重視で動く場面が多く、気付かないうちに許認可が必要な事業を始めていたり、広告表現が景品表示法などに触れてしまっていたというケースもあります。

また、他社の商標や著作権を侵害していたことが後から発覚し、サービスの中止や損害賠償を求められることもあります。

顧問弁護士は、“法の落とし穴”に先回りして目を光らせ、立ち上げ時点で法的なリスクを確認しておくことで、将来のトラブルを未然に防ぐ役割を果たします。

契約書・利用規約を整えて、信頼される体制へ

スタートアップが外部と取引を行う際には、業務委託契約や販売契約など、さまざまな契約書が必要になります。

また、自社のWebサービスを提供する場合には、利用規約の整備も欠かせません。

契約書などの整備が不十分なままだと、取引先やユーザーとトラブルになったときに自社に有利な主張をすることができず、想定外の損害や信用低下につながる恐れがあります。

顧問弁護士は、企業のビジネスモデルに合わせて、抜け漏れや曖昧さのない契約書や利用規約を整備します。

出資契約・株主対応もプロの目でしっかりサポート

資金調達は、スタートアップにとって成長の鍵を握る重要な局面です。

ただし、投資家との出資契約や株主間契約の内容を細かく確認せずに締結してしまうと、将来的に経営の意思決定を制限されてしまうこともあります。

株式の譲渡制限や経営判断への関与条項など、創業者にとって不利な条件が含まれているケースも少なくありません。

顧問弁護士がいれば、契約のドラフト段階から伴走し、経営陣の意向を尊重しながら、クロージングまでサポートします。

人事制度やハラスメント対策もおまかせ

従業員を雇い入れる段階では、雇用契約書や就業規則といった基本的な書類の整備が必要になります。

また、スタートアップでは組織が小さいうちは制度設計が後回しになりがちですが、従業員が増えてくると、人事評価の基準やハラスメント対応の方針などを明確にしておかないと、トラブルのもとになってしまいます。

顧問弁護士は、労務面の制度を法律に沿って整備し、運用時の注意点についてもアドバイスを行います。

適切な人事制度が整っていると、働く側の安心感が高まり、離職リスクの軽減や企業文化の醸成にもつながります。

顧問弁護士を選ぶときに見るべきポイント

スタートアップが安心して事業を進めるには、信頼できる顧問弁護士の存在が欠かせません。

どのような視点で顧問弁護士を選べば良いのか、確認しておきたいポイントを紹介します。

スタートアップ支援の経験があるかどうか

顧問弁護士を検討する際には、弁護士がスタートアップ支援に携わった経験を有しているかどうかを、必ず確認する必要があります。

スタートアップでは、ビジネスの立ち上げから資金調達、株主との関係構築、社内体制の整備まで、スピード感と柔軟性が求められる場面が少なくありません。

スタートアップ特有のフェーズを熟知し、実務的な知見をもとに助言できる弁護士であれば、企業の成長にとって大きな後押しとなるでしょう。

過去にどのようなスタートアップと関わってきたのか、実績にも目を通しておくと安心です。

自社の業界や課題に詳しいか?

顧問弁護士を選ぶ際には、対象となる業界への理解度も見逃せません。

医療やIT、飲食、教育など、業種によって法的リスクの種類や大小は大きく異なります。

業界の商習慣や規制を踏まえて適切なアドバイスができるかどうかは、企業にとって重要な選定基準となります。

例えば、医療機関であれば広告規制や患者対応、IT企業であれば個人情報保護や利用規約整備といった分野への理解が求められます。

日々の相談内容にスムーズに対応してもらうためにも、業界に対する深い知識と実績を持つ弁護士を選びたいところです。

スピーディーに相談できる体制かも重要

スタートアップにとって、顧問弁護士との連携において「相談のしやすさ」は欠かせない視点です。

日々変化するビジネスの現場では、緊急の法的判断が求められる場面も少なくありません。

メールや電話はもちろん、ChatworkやSlackといったツールにも対応できるか、相談予約がスムーズに取れる体制かどうかなど、実務面での柔軟性をあらかじめ確認しておくことが大切です。

連絡のたびに時間がかかるようでは、対応が後手に回る可能性もあります。

気軽に連絡が取れて、スピーディーに意見交換できる体制が整っていることは、経営判断を支える上で大きな安心材料となるでしょう。

弁護士法人広尾有栖川法律事務所ならではの強み

弁護士法人広尾有栖川法律事務所では、スタートアップ支援に注力しながら、業界特有のニーズや経営者のライフスタイルに寄り添った、きめ細やかな法務サービスを提供しています。

スタートアップ・医療業界に強い弁護士が対応

弁護士法人広尾有栖川法律事務所では、スタートアップや医療業界に深い知見を持つ弁護士がご相談を承っています。

代表弁護士は、freee株式会社をはじめとする複数のスタートアップにおいて企業内弁護士や監査役として関与した実績があり、現場のスピード感や課題への理解が豊富です。

また、医療法人での勤務や医学研究科での研究歴を有しており、美容医療・歯科を含む医療業界にも強みを持ちます。

スタートアップならではのビジネススキームや、医療現場で起こりやすい法的課題について、実務経験に基づいた実践的なアドバイスを提供しています。

契約から労務・知財まで幅広くサポート

事業を円滑に進めていくためには、契約書の整備、人事制度の構築、知的財産の保護といった土台作りが欠かせません。

弁護士法人広尾有栖川法律事務所では、契約書の作成・レビューをはじめ、社内規程や人事制度の整備、ハラスメント防止体制の構築、商標や著作権など知的財産の相談まで、ワンストップで対応しています。

顧問契約のほか、スポットでの対応も可能なため、必要なときに必要なだけ、柔軟にご相談いただける体制を整えております。

オンライン相談・キッズスペース完備で相談しやすい

「気軽に相談できる法律事務所でありたい」——その想いから、弁護士法人広尾有栖川法律事務所ではオンライン相談にも力を入れています。

ZoomやLINEを活用したご相談が可能なため、忙しい起業家や子育て中の方でも、時間や場所を問わずご相談いただけます。

また、2024年10月より、会議室内にキッズスペースを新設いたしました。お子さまの様子を見守りながら、安心してご相談いただける環境を整えております。

法律事務所に足を運ぶことが不安な方でも、落ち着いた雰囲気の中で、じっくりお話しいただけるよう配慮しています。

スタートアップの実情を理解した弁護士が対応いたします。どうぞお気軽にご相談ください。

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