(第一東京弁護士会)
五十嵐 沙織(広尾有栖川法律事務所)
会社の規模や事業内容にかかわらず、問題社員(モンスター社員)が所属するリスクを無視することはできません。既に問題社員に悩まされている経営者や人事担当者としては、いち早く問題を解決したいと考えていることでしょう。
当記事では、問題社員の特徴や対応方法について、当事務所の弁護士が分かりやすく丁寧に解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
目次
問題社員(モンスター社員)とは【5つの特徴】
問題社員(モンスター社員)とは、職場にて度重なる問題行動を引き起こしている社員のことを指します。就業規則違反や周囲への暴言など、職場環境に重大な悪影響を及ぼしており、企業に不利益をもたらす存在であるといえます。
問題社員(モンスター社員)の主な特徴は、以下の通りです。
- 社会人としての責任感やモラルに欠ける
- セクハラやパワハラを行っている
- 周囲との協調性に欠ける
- 自分自身を過大評価している
- 家族が介入する
それぞれ解説していきます。
社会人としての責任感やモラルに欠ける
問題社員は社会人としての資質に欠けるような態度を取ることが多く、責任感やモラルが伴っていないといえます。
例えば上司からの業務命令に従わない、仕事をサボるなど、組織の規律を乱すような態度を取りがちです。モンスター社員による問題行動が、顧客に対する評判低下を招いてしまう可能性も十分に考えられます。
単に能力不足や経験不足であれば指導の余地がありますが、本人の性格や気質の問題として放置してしまうと、モンスター化する恐れがあるでしょう。
セクハラやパワハラを行っている
セクハラやパワハラといったハラスメント行為によって、職場の雰囲気が悪くなるだけでなく、企業全体の生産性にも悪影響を及ぼします。
従業員がメンタルヘルスに不調を抱えてしまうと、通院や休職などの必要が出てくることから、治療に時間を要することになります。また会社や上司に対する不信感を抱くことになり、離職者が増えるリスクも増加するでしょう。
周囲との協調性に欠ける
周囲との協調性に欠けることも、問題社員とみなされやすい傾向にあります。たとえ数字で成果を残しているような優秀な社員であっても、状況によっては問題を引き起こしかねないのです。
協調性が無い態度を取ってしまうと、周囲との対立を引き起こしやすく、仕事が円滑に進まなくなってしまいます。相手より優位に立ちたいという心理的背景から、周囲にストレスや不快感を与えてしまうことにもつながりかねません。
自分自身を過大評価している
自分自身の能力や人柄を過大評価しすぎた結果、他者からのアドバイスやフィードバックに対して聞く耳を持たない問題社員も存在します。
時として感情的な態度を取ることから、周囲の雰囲気を悪化させてしまい、チームワークの形成を阻害してしまうでしょう。
また自分以外の他者に原因を求めてしまい、他責思考に陥ってしまう傾向も見受けられます。反省や改善につながらないことから、ますます自分を正当化する考え方に陥りがちです。
家族が介入する
少し珍しいパターンですが、仕事に対して家族が介入することで、問題を複雑にしてしまうケースもあります。
例えば家族が従業員の仕事の進め方に口を出したり、査定や昇進の結果に口を出したりすることが挙げられます。
周囲も気を遣ってしまうため、手を差し伸べにくいような問題社員として扱われてしまうのです。
問題社員へ効果的な5つの対応方法
問題社員に対して効果的な対応方法についてご紹介します。具体的には以下の通りです。
- 問題行動が確認できた場合には直ちに指導を行う
- 毎月や毎週など定期的に面談を行う
- 部署異動によって心機一転を図ってもらう
- 社員のための相談窓口を設ける
- 必要に応じて懲戒処分を下す
それぞれ解説していきます。
問題行動が確認できた場合には直ちに指導を行う
モンスター社員に対しては、問題行動が確認できた場合、直ちに指導を行うことが大切です。問題点や周囲への悪影響を指摘し、仕事に対する姿勢や取り組み方について、意見を交換するようにしましょう。
また具体的な改善策を提示することで、自分自身を改善しやすい環境が整いやすくなり、本人の行動や振る舞いも良い方向に変化するかもしれません。
毎月や毎週など定期的に面談を行う
毎月や毎週など定期的に面談を行ってフィードバックを与えることで、問題社員の改善意識を高める場となるでしょう。
面談では相手にも言い分があるため、話し合いの内容は事実関係を記録としてメモすることが望ましいです。客観的な事実を示しながら、自分自身が起こしている行動の問題点を理解してもらえるようにしましょう。
注意点として、相手が問題社員だからといって怒鳴るような態度は避けるべきです。スマホなどによって録音されている可能性があり、証拠として握られてしまうリスクが生じてしまいます。
部署異動によって心機一転を図ってもらう
本人の適性を踏まえた上で部署異動を図ることで、問題社員の行動が改善されるケースもあります。問題行動だと捉えられていた点が、人間関係や業務内容の変化によって、マイナスに働きにくくなるのです。
ただし適切な指導や配置転換を行えなければ、異動先でも問題を引き起こしてしまう可能性が高いでしょう。かえって会社に悪影響を及ぼしかねないリスクも含んでいることから、人事担当者が処遇をしっかりと判断しなければなりません。
社員のための相談窓口を設ける
モンスター社員の問題行動を抑え込むことが望ましいですが、既に被害を受けてしまった社員のために、安心して相談できる相談窓口を設けておく必要があります。被害を受けた社員が、適切なサポートを受けることができます。
単に相談窓口を設置するだけでなく、運営体制を整えながら守秘義務を明示するなど、実際に機能するような支援を行っていきましょう。
必要に応じて懲戒処分を下す
あらゆる手段を尽くしても問題社員の行動が改善されない場合、就業規則などを根拠にした懲戒処分も検討しなければなりません。
懲戒処分を行うに当たっては、事実関係の調査や認定などを具体的に特定する必要があります。また懲戒予定の対象行為を引き起こした問題社員に弁明の機会を与えることも必要です。
不用意に懲戒処分を行ってしまうと、懲戒処分が不当であるとして訴訟を起こされてしまうリスクにも留意しておきましょう。
問題社員に退職勧奨(退職勧告)で辞めてもらう方法とは
退職勧奨とは、会社側が従業員を説得し、従業員との合意を取り付けたうえで、雇用契約の終了を目指すことです。「解雇」は会社からの一方的な雇用契約の終了を指しますが、「退職勧奨」は従業員との合意を目指す形となります。
退職勧奨を行うにあたり、法律上において前提条件を設ける規定はありません。ただし企業側が退職を強要するような発言や行動を取ることは、不法行為として認定される可能性が生じます。
退職勧奨では、対象となる従業員と面談を行い、退職の時期や金銭面などの処遇を話し合う流れとなります。事前に退職勧奨の方針を定めるなど、人事担当者が状況に対して理解を深めておくことも大切です。
問題社員を解雇することは可能か
退職勧奨を行っても従業員が退職の意思を示さない場合、企業側は解雇の選択肢を検討する流れとなります。
ただし解雇を行ってしまうと、不当解雇として訴訟を起こされるリスクが高く、企業側が損害賠償や雇用の継続を命じられて敗訴するというシナリオも考えられます。
従業員を解雇することは可能ですが、退職勧奨が上手くいかなかった理由を踏まえて、別の視点から退職勧奨を行うことが望ましい方法です。あくまで解雇は最終手段だと捉えるようにしましょう。
問題社員に関する問題解決のためには弁護士へ相談しましょう
問題社員に関する対応を、自社のみで解決しようとするのは非常に負荷が大きく、適切なアプローチを取れないことがあります。相手に対して感情的になって嫌悪感を示してしまい、法的に不適切な対応を取ってしまうことで、かえってトラブルを引き起こしかねません。
問題社員への対応は、個別での注意・指導から始まり、配置転換・懲戒処分・退職勧奨、最終手段として解雇までのシナリオを見据える必要があります。
弁護士は労働審判・労働訴訟といった実務を熟知していることから、適切なアドバイスを行うことが可能です。弁護士に早めに相談を行うことで、職場環境を悪化させることなく、貴社を問題解決へと導きます。
広尾有栖川法律事務所について
広尾有栖川法律事務所では、複数のスタートアップ企業での勤務経験や役員経験がある弁護士が在籍していることから、企業法務における豊富な経験がございます。
当事務所が重視していることは、クライアント様のご状況やご意向を「しっかりと丁寧に聴く」ことです。最善の方法を提案しながら二人三脚で伴走し、問題を解決することを目指しております。
また、経営コンサルタントやインハウスローヤーとしての経験があることから、クライアント様の現場の声や企業内の意思決定プロセスなどを理解したうえで、アドバイスを行えることも強みです。
まとめ
当記事では問題社員(モンスター社員)の特徴や対応方法について解説してきました。
問題社員に対して適切な対応を取らずに状況を放置してしまうと、周囲への悪影響が広がってしまい、本人も指導を受け付けなくなってしまう危険が生じるでしょう。問題が悪化する前に、個別での指導を行うことが基本的な姿勢となります。
また懲戒処分や解雇を検討するとなれば、企業側がリスクを負いやすい状況となります。事前に弁護士に相談することをおすすめいたします。